商業BLは読む価値なし?腐女子歴20年の私が敢えて王道の人気作を読んでみた

商業BLは読む価値なし?腐女子歴20年の私が敢えて王道の人気作を読んでみた

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コタロー編集チーム
エロ漫画・アニメなど、オタク趣味のディレクターとライターで構成されたチームが作品の隅々までレビュー。軽いエロからハードエロまで、シコれる作品を紹介していきます。基本的に好きな作品や、シコネタのルーティンになっているオススメばかり!コミケ参加は不可欠で新刊チェックも日々行っています。
早いもので、気づけば腐女子歴20年。あちこちでBL漫画好きを標榜してきた私ですが、よく考えるといわゆる商業BLの類いはほとんどスルーしてきたんですね。食わず嫌いと言いますか、はなから相手にしていないところがあって。でももしかしたら、自分が知らないスゴい世界が広がっているのかも…。というわけで今回は、こじらせ腐女子が敢えて王道のBL漫画にチャレンジ。果たして吉と出るのか凶と出るのか、乞うご期待です!


商業BLとは出版社が扱うBL作品のこと



商業BLとは、出版社を通して世に売り出されるボーイズラブ作品の事。今回はとくに漫画に注目しますが、同人作家には漫画家だけでなく小説家も含まれます。

BLというジャンル自体がややマニアックではありますが、商業BLの場合はできるだけ多くの読者に受け入れられるよう、過激さをやわらげる方向でさまざまな工夫が施されているのが普通。

出版社(編集者)によるその“工夫”の部分こそが、同人BL作品と商業BLとの決定的な違いを生み出すもとにもなっています。


商業BLと同人作品の違いとは?



商業BLと同人作品、ジャンルが同じなのに読むと印象からして全く異なります。それぞれの特徴を押さえながら、両者の本質的な違いを浮き彫りにしてみましょう。


商業BLにも優れた作品はあるけど、ややありきたりな展開が多い

商業BLにとって一番大事なのは読者の存在。同人BL作家が読者を無視しているわけではありませんが、読者のニーズを想定して作品の方向性が決められるのは商業BLの宿命です。

当然過激すぎる性描写やあまりにシュールな設定、難解すぎるストーリーなどは除外されます。これまでにない斬新なテーマでありながら、同時に突飛な内容は含めない。そういう難しい縛りの元で、編集者も作家も苦悩しているわけですね。

この事がもたらす最大の弊害は、展開がややありきたりになりがちな事。登場人物や人間関係の設定については凝りに凝っていても、多くの制約ゆえストーリーはそこまではっちゃけられません。そうなると必然的に、奇抜なお話にはなりにくいところがあるんです。


同人作品には才能が光る、隠れた名作や掘り出し物がある!

同人作品には、粗削りながらもキラリと光る才能が見つかる事がよくあります。商業BLの作家たちを縛る制約から自由なのもありますし、そもそも仕事が高度にシステム化されていないときの方が創作物は面白くなりますから。宮崎駿だって初期の「ナウシカ」や「ラピュタ」の方が、後期の作品より段違いにイイじゃないですか。

同人作品の場合、作家が描きたいテーマをストレートに表現するため漫画に込められた衝動が非常に強いんですね。逆に言うと個人の思い込みがそのまま出てくるので、一人よがりに終わる危険性も多分にはらんでいます。

野球にたとえるなら、商業BLは打率3割のイチロー型プレイヤー。いっぽう同人BLは、三振かホームランかの当たりハズレが大きいタイプの選手でしょう。コツコツヒットを重ねるのも大事ですがBL漫画の一発逆転満塁ホームランを見たいなら、同人作品のチェックは欠かせないでしょう。


腐女子歴20年の筆者が敢えて王道の商業BL作品を読んでみた

1周まわって逆に新鮮!どんなジャンルでも、深入りしていくとそういう現象がよく起こります。三国志にどハマりした手練れのファンが、推し武将を訊かれて「何だかんだ言って劉備かな」と答えたりするように。

腐女子をこじらせ早や20年。商業BLはほとんどスルーしてきた筆者ですが、今回敢えて王道中の王道作品にチャレンジしてみる事にしました。果たして本当に“1周まわって新鮮”と感じられる内容なのでしょうか?


今回選んだ漫画は「純情ロマンチカ」

作者中村春菊
出版社角川書店
ジャンルドタバタラブコメディ

商業誌での連載開始は2002年。では“過去の名作”なのかと言えば、決してそうではありません。なぜなら、2020年8月現在も季刊雑誌「エメラルド」(KADOKAWA)で連載中だからです。

作者は「世界一初恋」の中村春菊。2008年に始まったアニメは第3期まで回を重ねています。また2019年には舞台化する事も発表されましたが、コロナの影響で2020年夏の公演は延期となりました。

受験を控えた男子高校生・高橋美咲と、その兄の友人でBL小説家の宇佐見秋彦(愛称はウサギ)の恋模様を描いたドタバタラブコメディ。宇佐美が家庭教師として美咲の勉強を見る事になったのがきっかけで、2人はいつしか恋人同士の関係に。

既刊本としてはコミックス全24巻(2020年8月現在)、さらに小説8冊。ドラマCDや音楽CD、テレビアニメ関連の商品まで含めると、世間への認知度はBLコミック界No.1と言えそうです。




これぞ王道!悪く言えばベタ過ぎる…辛口査定

素朴でやんちゃな主人公の男の子が、功成り名遂げたイケメン人気作家に翻ろうされる…。BLものでなければ韓流ドラマにでもありそうなベタな設定は、“わかりやすさ”という点で確かに成功しています。

主人公・美咲(みさき)の家庭教師をする事になるウサギこと宇佐美秋彦は、

・大財閥の御曹司
・T大法学部首席卒業
・最も権威ある文学賞を受賞したベストセラー作家

という完璧すぎる出自&経歴の持ち主。加えて美青年で長身と、容姿もバツグンです。漫画だから何でもアリと言えばそれまでですが、腐女子から見るとやっぱりちょっと違和感が。

要するにこれって、純情な乙女が夢見る“白馬の王子さまストーリー”のバリエーションなんですよ。主人公の美咲にしたって、名前は女の子そのもの。性格や口調は元気な男の子ですが、少し小柄でお目々ぱっちりなそのいで立ちは少女漫画のヒロインと完全にダブります。

だから「本作がBL漫画を世に広めた」とか言われると、腐女子としては断固否定したくなるんです。読んで引き込まれるストーリーだし、キャラクターも魅力的なのは間違いありません。しかしやっぱりこれは、BLの皮をかぶった王道の“少女漫画”でしかないと思います。


特に物足りないのがHシーンの必然性のなさ

商業BLとしては濡れ場が豊富で、見せ方もリアルすぎないよう配慮されているのはGood。しかし頻繁に出てくるその手のシーンに、本当に必然性があるかと言えば疑問です。

同人BL漫画においては、登場人物たちがアナルセックスに至る“動機”と“過程”こそが全てと言ってもいいほど重要。そこをいかに濃密かつ説得力ある形で提示するかが、作品の良し悪しを決めるわけです。

そういうBL展開に慣れた目で見ると、「純情ロマンチカ」のHシーンは単なるお約束のようにしか思えないんですね。そもそも物語の力点が、

・登場人物同士の人間関係
・登場人物同士のアナルセックス

のどちらに置かれているかの違いとは言え、そこはやはり物足りなさを感じざるを得ませんでした。


商業BLはBL初心者には良いかも!入門編としてならおすすめしたい3作品

「純情ロマンチカ」は圧倒的な人気作ですから、胸を借りるつもりでだいぶ辛口に批評しました。でも読み始めたらけっこう夢中になって、今は最新刊の発売をちょっと楽しみにしている自分がいます(笑)。

読んでみてわかった事は、商業作品はBL漫画の入門編として最適だという事。BLジャンルのさらなる普及を考えても、腐女子向けのディープな作品ばかりじゃさすがに息が詰まりますしね。ですからここでは、BL初心者にぴったりの商業BLおすすめ3作品をご紹介したいと思います。


①「グラビテーション」

作者村上真紀
出版社幻冬舎
ジャンルラブコメディ

「純情ロマンチカ」とやや似た感じの作品ですが、こちらはさらにライト感覚のBLストーリー。物語の冒頭、ミュージシャン志望の高校生・新堂愁一は夜更けの公園でイケメン小説家の由貴瑛里(ゆき・えいり)と運命的な出会いを果たします。

謎めいた魅力に心奪われた愁一の猛アタックに、ひねくれ者の由貴も最後は好意を受け入れます。ただ複雑にゆがんだ由貴の心には、少年時代に負ったトラウマと忘れがたい1人の人物がいて…。

「純情ロマンチカ」と一番異なるのは、ふんだんにちりばめられたギャグ要素。バンド仲間のヒ口や妹・真衣子との丁々発止のやりとりが、ストーリーに軽快なテンポを生み出しています。ボーイズラブ要素が苦手な人でも、明るい作画と物語の雰囲気ゆえ、気軽に手に取って楽しめるでしょう。




②「エスケープジャーニー」

作者おげれつ たなか
出版社リブレ出版
ジャンル青春ラブストーリー

高校時代に付き合っていたものの、ささいな事でケンカばかりしていた久見直人(メガネの方)と羽瀬太一。とうとう最後は、太一が発した「ただの性欲処理でヤってるだけだと思ってた」の捨てゼリフにブチ切れて絶縁。その後は互いに「2度と会うまい」と思っていた2人でしたが…。

晴れて大学に入学してみると、同じ大学の同じ学科で2人は再会を果たします。理系だったはずの太一は文転しており、S大のキャンパスを舞台に直人と再び友人同士に。

一度は別れた恋人との思いがけない急接近。直人と太一それぞれの心理的な葛藤がきちんと描き分けられていて、読み応えアリです。商業BL漫画にしてはセックスシーンも通り一遍でなく、かなりリアルで刺激的なのも魅力の1つでしょう。




③「花は咲くか」

作者日高ショーコ
出版社幻冬舎
ジャンル人間ドラマ

平凡な会社員の桜井は、子どもの頃から何をやっても長続きした試しがありません。女性に対してもすぐ熱が冷めてしまい、何度も出て行かれてしまいます。何か夢中になれる対象をと常に探しながらも、独り身の日々を空しくくり返すだけでした。

そんなある日、会社からの帰り道で偶然大学生の蓉一とすれ違います。ぶつかった拍子に資料を落とし、そこへ蓉一が飲んでいたジュースがこぼれびしょ濡れに。「同じ雑誌と交換するからうちへ」と誘われるままについて行った先は、うっそうと茂る森の中の古風な一軒家でした。

とにかく無愛想な蓉一と、運命のいたずらで何度も会う事になる桜井。ストレスだらけの日々の中、蓉一と過ごす屋敷での時間が次第に彼を癒し始めます。

2人の距離がゆっくりゆっくり近づいて行き、少しずつ打ち解け合っていくさまが驚くほど丁寧に描かれた秀作。上質なヒューマンドラマのごとき展開は、BL初心者が男同士の真実の愛を理解するのにもうってつけでしょう。




商業BLに飽きてきた頃におすすめ!玄人受けするオリジナル同人作品3選

ここまで商業BLばかり紹介してきましたが、20年選手の腐女子としては正直ストレスたまりまくりです(笑)。最後は思う存分、自分の“沼”に皆さんを引きずり込んでみたいと思います!


①「かげまんが」

作者所帯庵
ジャンル調教・緊縛
一言ポイント生意気盛りの江戸の美少年がセクシー
ひとコマ目からハメてますから、同人BL漫画の面目躍如といった感じ。主人公の景(けい)は、江戸時代に流行した陰間茶屋で客に春をひさぐ陰間(男娼)の1人。上から目線の客あしらいを茶屋の主人にいさめられますが、「(売られて来た身で)好きでやってるわけじゃない」と聞く耳を持ちません。

Sっ気のある景のプレイは人気でしたが、ある晩茶屋にやって来た初老の男は景のさらに上を行く男色のベテランでした。客のイチモツをアナルに入れさせれば終わりと思っていた景にとって、執ような前戯から始まる男のプレイは目からうろこの連続。

強烈な口吸いにとろんとさせられ、麻縄で縛られての前立腺マッサージ&乳首舐めで景のチンポからはガマン汁がほとばしりっ放しです。焦らしに焦らされ3点責めでフィニッシュを迎えたとき、生意気だった景の顔はすっかり“女”のそれに変わっていました…。

画力も構図も商業誌並みの同人BL作品。しかし不満はやっぱりオチですね。冒頭から気になってはいましたが、景の造形は明らかに美少女寄り。少年らしい顔つき体つきのままひと皮剥けてこそ、真のBLストーリーだと思うからです。




②「トゥードランク・トゥーハードオン」

作者加東鉄瓶
ジャンルレイプ
一言ポイントEDで離婚した上司・野田の復讐劇
部長の自分をやたら慕う部下・猿渡(さわたり)。有能とは言えないもの自分への敬意を全身で表す彼を、野田は憎からず思っていました。ところがある日、野田の離婚原因がEDだったと話す女子社員といっしょに、猿渡が自分の事を笑っている現場を目撃してしまい…。

怒り心頭に発した野田は、仕事の打ち合わせと嘘をつき猿渡に睡眠薬を飲ませてホテルに軟禁。全裸でベッドに転がし、まずは尿道カテーテルを奥まで入れて若い猿渡の射精を禁じます。そのあと自分がED改善用に使うはずだったエネマグラを彼の肛門に無理矢理挿入しました。

以前からテーブルマナーが身についていないと注意していた猿渡に食事をさせ、作法をミスるたび電動エネマのスイッチを入れるぞと脅します。射精を禁じられ勃起したままのペニスは、あと4時間で壊死する運命。

しかしお人好しの猿渡は、どこまで追い詰められても野田を悪く言ったりしません。最後はついに野田もほだされ、ノンケにもかかわらず猿渡とのアナルファックに挑みます。若い肛門のタイトな締まりに、中折れせず見事射精。男同士の歪んだ愛の結末ですが、非常に心揺さぶるエンディングです。ただラストの2人の今後を匂わす描写は蛇足でしょう。




③「密室監禁AV垂れ流し」

作者サクサク還元濃縮(股下金珠)
ジャンル乱交
一言ポイントバラバラだったクラスの男子が穴兄弟に
運動会を明日に控え、一向にまとまらないクラス。原因は男子たちのあまりに非協力的な態度にありました。見かねた担任教師は彼らの性根を鍛え直すべく、かつて自分も体験したとんでもない荒療治を仕掛ける事に。

放課後クラスの男子全員を特別訓練室に集め、部屋に入りきったところで扉を完全にロック。教師は別室に移動し、真っ暗闇の密室で男子たちの様子をモニターで監視します。

ところが誰もが文句タラタラで、絆が生まれる気配など全く見えません。そこでいよいよ最終兵器。壁のスクリーンに向けて、過激なAVを大写しにして流し始めました。1人また1人と勃起しだした頃、次にスクリーンは男同士がまぐわうゲイビデオ一色に…。

翌朝、担任教師が扉を開けると全員パートナーとアナルセックスの真っ最中。身も心も深く結ばれた彼らは、運動会でも抜群のチームワークを発揮し、「ひとつに連ケツ」したのでした。このダジャレのオチだけは、うーんって感じでした(笑)。





まとめ:商業BLも面白い!でも腐女子が帰るふるさとはやっぱり同人BL

商業BL漫画は長編小説、同人BL漫画は短編小説。今回両者を読み比べてみて、そんな感想に落ち着きました。スパッとキレがいいのは、やっぱり後者。

じっくりストーリーを追いかけるなら商業BLに限ります。でも腐女子は、葛藤の末の和気あいあいみたいな雰囲気にはなじめません。もっとじめっとした泥沼が心地いいんです。

こじらせ腐女子は同人BLにこもりますが、皆さんはぜひ優れた商業BLから始めてみて下さいね。以上、panpan(パンパン)編集部からのお届けでした。

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